KISS OF LIFE
夜7時。

仕事が終わったあたしは会社を出た。

結局、何にもなかったな。

あたしがオフィスに戻ってきた後、南野課長もオフィスに戻ってきた。

それでお互い仕事である。

南野課長はパソコンとにらめっこをしたり、書類を部下に渡したり、東雲主任と話したり…と、特になかった。

彼に声をかけられる訳でもない。

彼に呼び出される訳でもない。

「やっぱり、何かの間違いだったのかな?」

もしかしたら、あたしからかわれたのかも!

全く、これだから現実の男はヤなのよ!

思わせぶりな態度をとるんだから!

嫌いなら嫌いって、はっきり言ってくれた方がずっとありがたいわ!

「ホントにもう」

あたしはカバンの中に手を入れた。

「あ、あれ?」

そこにあるはずの携帯電話がなかった。

えっ、どこに行ったの?
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