粉雪2-sleeping beauty-
the summer season
―――夏の始まりは、蝉の声によってもたらされた。


折角梅雨が終わってイラつきが解消されたと思ったら、

今度はうるさすぎて眠れやしない。



『―――アァ!』


俺の下に居た女が、快感に顔を歪めた。


その瞬間、自分が萎えていくのを感じる。



…あーあ、折角イキそうだったのに…。


虚しくなりながら、腰を振り続けた。




あの日から、俺は全てを振り払うように女を抱いている。


少しでも気を抜けば、千里を自分のものにしてしまいそうになる。


またあんなことがないように、俺に縛り付けてしまいそうになる。



だけどそんなことをしたら、隼人さんと変わらなくなる。


俺も同じように、閉じ込めたくなってしまう…。



それじゃダメだってわかってるから…。


お前を思い出しながら、別の女を抱くんだ。



“あたしは、アンタなんか愛してないよ”


段々段々、自分に言われたように聞こえてくる。


ただそれが怖くて、何も考えないように腰を振り続けた。




『―――ャ!!』



うわー、最悪。


何でこんな、汚い顔出来るんだろう。


てゆーか俺も、こんなの汚い顔のヤツ抱いてるから、何も言えないんだけど。



どーでも良いけど、暑すぎる…。


クーラー壊れてんじゃねぇの、このホテル?



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