君へ

13

「スーパーもうすぐだね。夕飯とせっかくだからお菓子も買おうか。なおは何が好き?」
俺はやっぱポテチとプリッツとクランチは外せないなぁ。
学校から公園とコンビニを通り越して緑がちらほら見える住宅街の中にある俺達の家を少し過ぎるとスーパーだ。
「なおはいちご味のチョコチップアイス好きだったよね。今も?」
聞くとこくりと頷いてくれる。
「じゃあ今日はそれも買って帰ろうね」
優しく言うとなおの表情が和らぐ。
でもまだ緊張してる。
仕方ないけどね。
突然過ぎたし、遅過ぎたもんね。
なおはこの5年で好きな物は増えた?
恐くて苦手なモノは減ったかな?
「今日は何がお買い得かな」
なおに話し掛ける言葉はとめどない。
こんな風に何でもない事をずっと話したかった。
「…今日はお肉の日…」
ぽつりと小さな声。
なおもこのスーパー使うのかな?
「そうなの?じゃあロールキャベツのお肉にぴったりだね」
今日の夕飯はロールキャベツでいいかな。
返事が無くても隣にいてくれればいいけど返事があると尚嬉しい。
昔みたいに話し掛けて歩いていると緊張も解れて昔見せてくれた笑顔がちらりとのぞく。
可愛い。
「ロールキャベツはコンソメ味とトマト味とクリーム味どれがいいかな?」
悩んでいるみたい。
小首を傾げてさらさらと髪が流れる。
「……永久くんは何味食べたい?」
小さな澄んだ声。
俺の事なんか気にしなくていいのに。
むしろなおの食べたい物しか作りたくないのに。
「ん~俺はどれも好きだから決められないんだよねぇ」
なおが思案顔になる。
なおは今日は何が食べたいかな?
「……トマト、味…」
「今日はトマト味にしようね」
もっと言っていいよ。
なおの好きな物沢山作ろうね。
< 31 / 48 >

この作品をシェア

pagetop