君へ

22

温かい。
もっと、近くに行きたい。
温かい温かい。
額を擦り付け、目一杯腕を広げて抱き締める。
気持ち良い。
ふわふわとした夢のような気分。
夢?
頬に何か触れる。
何か分からないそれも、今の状態もとても心地良い。
自然と口角が上がる。
そして、自分の中で一番この温かい状態に近い名をあげる。
「永久くん…」
「なに?」
「…………」
返される筈の無い返事。
おかしい。
まだ半分以上夢の中でふわふわしている意識を起こそうと努力する。
「んん」
軽く頭を振り目を擦り、上半身を起こす。
起こそうとした。
「おはよう、なお」
温かい腕が自分の腰に周り、起き上がれない。
目の前には、長い睫毛。
高いすっとした鼻。
永久…くん?
「え…?」
そこで初めて気付く。
今まで腕を回していた存在。
目と鼻の先ってこの事…?
真っ赤になる頬と共に熱を持つ頭で考える。
まさか。
「な、な、なんで永久く…」
目の前に永久くんの笑顔があった。
抱きしめられていて顔が近い。
でも、目を擦っていたのとは別のもう片方の手がしっかり握っているもの。
永久くんのシャツ。
何時から握っていたのだろう。
くしゃくしゃだ。
じ、自分から、抱き、抱きついたのだろうか……?
何がどう起こって最終的にこの状態になっているのだろう。
昨日は部屋に戻って少し経ってから予習と復習をしてからベットに入った。
夜は余り眠れないのでかなり遅くにベットに入ってから記憶がない。
「夜が、寒くて」
永久くんの言葉。
「え?」
「近くに行きたかった」
ぎゅ。
抱き締められる。
確かに、温かい。

永久くんの傍は、いつも温かい。
「あた、たかいね」
思わず声が出る。
「うん。なおは温かいね」
永久くんがだよ。
言いたかったけど、永久くんを見たら飲み込んでしまった。
理由なんて、なんでもいいから、傍に居たいと思ってしまった。
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