君へ

私は相変わらず家も学校も恐いから嫌いだったけど彼に会えるから学校は好きになっていった。

でもたまにどうしても体が痛くて、動けなくて学校に行きたくても行けない時が月に何回かあった。
そういう時は早く早くこの痛みが過ぎ去るようにと体を丸めて布団にくるまっていた。


彼は必ずお見舞いにきてくれたけど、玄関であの人が追い返した。
私の部屋まで届くくらいの大きな声で怒鳴り散らした。
その後は私の部屋のドアを力任せに蹴る。
もしくはそのまま部屋に入って私も蹴られる。


彼はそれに気が付いてすごく憤ってくれたね。でも私は普段優しいあなたが怒るから思わず泣いてしまった。
あなたはあなたのせいじゃないのに、
『なお。ごめんね。ごめんね』
優しく怯えて泣き出した私を抱きしめて、背中をさすってくれた。
『なおは守るから。絶対、守るから』

夏になり一緒にいれる時間が増え、沢山喋り勉強した。

私は夏バテし易くて彼はいつも笑いながらいつもある冷たいお茶を差し出して介抱してくれた。

永遠に時が止まればいいと思った


それくらい、母親がいなくなったあの時以来初めて幸せだと思った。


秋になり、彼の顔が曇ることが多くなった。
私は永遠はやはりこないのだと誰に教わるでもなく感じていた。


『なお、次の土曜日の夕方会えるかな』

彼はなるべく私を刺激しないようにと普段通り優しい声で喋ってくれた。

でも私はいつも彼が掛かってくると隣の部屋にいってしまう携帯電話といつも口論していたのを知ってる。

もう此処にいちゃいけないのに優しいあなたは私に同情してくれて。
浅ましくて愚かな私は少しでもあなたの同情をひこうと縋り付いた。

本当にごめんね


『土曜日だね。大丈夫だよ』

殴られても蹴られても必ず会いに行くと私のなかで心は決まっていた。

『ごめんね。寒いし危ないのに』

いいんだよ。

あなたがくれた沢山の優しさに比べたら私が動くことなんてとても小さいこと。

『なお。必ず君を守るよ』


最後に彼に耳元でささやかれ、私は聞き取れずにえ?と彼を見た。


でも彼はまたねといつもの別れ道にきて手をふるだけだった。

それが最後だったね。
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