零の狼-新撰組零番隊-
第一幕
夜の闇を走る。

任務を終えた私は、現場の料亭から離れるべく暗い路地を選んで移動していた。

追っ手はない。

額田を暗殺する際に、警護の二人にも手傷を負わせている。

あの傷では私を追う事はおろか、立ち上がる事も儘ならない筈だ。

それに。

「!」

羽織の内側から電子音が鳴る。

懐に手を忍ばせ、私が取り出したのは携帯電話だった。

浅葱色の携帯電話。

通話ボタンを押し、耳に当てる。

「…はい」

『春夏秋冬か』

低い声が受話器越しに聞こえる。

『各省庁に手回しは済んだ。額田は事故死という事で内々に処分される。もう逃走の必要はない』
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