もてまん
出会いは必然だった

八月。

浪人生にとっての夏は、苦手分野克服の山場。

予備校でも夏の集中講座がいくつも開設される。

繁徳も舞もそれなりに勉強に集中し、夏も予備校通いが続いた。

時折授業で顔を合わせることはあっても、繁徳と舞の関係は夏休み前とさほど変わりはない。

ただ、繁徳を見る舞の視線が、深く目の奥まで届くようになった。


(うん、舞、元気にしてるな)


舞のそんな瞳に出会うたび、繁徳は安心感する。

舞は、千鶴子との関係を深めるようにピアノ弾いた。

それは同時に、繁徳に近づく道でもあったのだ。


(俺も頑張んなきゃな)


繁徳は、明るく弾む舞の瞳を見て励まされた。
< 122 / 340 >

この作品をシェア

pagetop