初恋タイムスリップ【完】
秋が過ぎ、冬になって



ある寒い日


いつものように放課後、音楽室でピアノの練習をしていた。





新しい曲。





なかなか思うように弾けない。

同じところで、何度もつまづく。

うまく弾けない自分が嫌になる・・



何度も何度も繰り返し練習をした。


それでも弾けない。。。




はあ・・・



私は一度、楽譜と鍵盤を行ったり来たりしていた目をギュッと閉じた。


そして、目を開けて音楽室をぐるっと見渡した。







音楽室の後ろの壁に掲げてある音楽家たちの肖像画が、

何度もつまづく私をあざ笑っているかのように見えた。


リストって

なんでこんなに難しい曲を作ったんだろう・・・


あれ、リストってどの人だっけ?


ピアノの真上の電気以外は消してあったから、

暗くて肖像画の文字まではよく見えない。


暗い・・・ん?くらい?



窓の外に目をやると、外は真っ暗だった。





夢中になりすぎた。


今何時……




ろ、6時半過ぎてる!!




あわててピアノにカバーをかけ、音楽室の電気を消し、鍵を閉め、職員室へ走った。


「先生すみません、遅くまで…」


瀬戸先生はプリントを見ながら

「一度見に行ったんだけど、すごく集中してたから声かけらんなかったよ〜。

頑張っているね。

私、応援しているからさ!」


瀬戸先生って本当にいい先生だな。



「ありがとうございます」


「気をつけて帰りなさいよ〜、外暗いから〜」



「はい、失礼します」

私は深々と頭を下げ、校舎の階段を降り、下駄箱で靴を履きかえ、

すっかり夜になってしまった空を眺めながら外に出た。



ううううっ寒っ。。




ふと、



目線を下ろすと、



そこに
壁に寄り掛かって立っている人がいた。








成海くんだった。
















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