桃園むくげXX歳である。
斎院あおい、1歳である。
褒められたからには、名乗るが定石。

朝顔の花の形を愛おしいと思った4歳からはじまり
三角フラスコとロートに出会った12歳
路上に並ぶ三角コーンが愛らしくて悶えた19歳

それらの感情が「円錐」に機縁することに気づいたのはいつの頃だったか。

護身具はピストルメガホン。

斎院あおい

キャバ嬢1歳である。

よろしく。

父が高校を卒業してすぐに他界したため
歓楽街のネオンがちらつく店で
グラスにお酒を注ぎ
諸兄と楽しくお話をするのが私の仕事となった。

私服で闊歩すると、皆を挑発するそうなので
仕方なく幼さを演出する
学生時代のセーラー服に袖を通して歩いている。

スカート丈は膝下5cm、模範生である。
だがこれでも立派な成人である。

一緒に店へ向かうと援助交際しているみたいだというが
私服で同伴してあなたが理性を保っていられるのかと問いたい。

垂れ流すのは欲情ではなく、脳髄だというのに。

執拗にまとわりつくものに
ピストルメガホンで鼓膜を割るのは後にして、名刺を渡す。

名刺を片手に歓楽街へやってくる。
諸兄、それは無駄使い。

ピンクのドレスに白い肌。
カクテルグラスの円錐を愛す私の瞳を誤解して
彼らは何度も足を踏み入れる。
胸の谷間は覗けても
あおいの心は覗けまい。

花の蜜はそんなに甘いの美味しいの
私は何も感じないのだけれども。

キレイだ、可愛い、色気があるね。

褒められたからには、名乗るが定石。

クラブ斎院

あおい、キャバ嬢1歳である。

よろしく。

でも、あなたには本名を

桃園むくげ、20歳である。

よろしく。
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