本社への異動は、まさしく栄転。
会社の中枢とも言える才能が集まっていて、社内外からの注目も集まる。

その頂点にいるのが相模恭汰というカリスマ。
建築業界を牽引している憧れの人。

私も大学時代から憧れ続けて。
相模さんの作品に傾倒し。
ひたすら近くにいきたいと勉強してきて。

同じ会社に内定をもらった時にはあまりにも嬉しくて、濠がおろおろするくらいに泣き続けたっけ…。

そして。

来週からは、その憧れの相模さんの下で仕事をする事になる。
設計を仕事にしているならば、誰もが一度は見る夢を現実にする事ができて、まだ信じられない。
我社の設計デザインコンクールの大賞受賞者は、 受賞直後に相模さんの下でしばらく鍛えられて、建築業界全般の業務にも携わる事になる。

これからは会社の為だけでなく、後輩達の為にも力を発揮できるようにならなきゃいけなくて。

背負う未来への期待と重荷は予想以上。

自分で求めて掴んだ賞の凄さに心身ともに引き締まる毎日…。

賞を望んだのは自分自身で、心から嬉しいと思う。建築という仕事に誇りを持っている。

それでも、小さな頃から長い間抱いていた心の隙間を完全に覆う事はできなくて。

大賞を受賞しても、濠に抱きしめられている時だけが、何かを企んでいるように優しく笑いかけられている時だけが。

私の身体中を暖かく隙間なく満たす唯一だという事に改めて気づいただけだった。

本当に、濠だけが。

この作品のキーワード
溺愛  社会人  切ない  恋人  甘い  両想い 

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