「…なんで」

絞り出した声はなんとも情けなく掠れていた


顔を上げた美咲は
まっすぐに俺を見つめた


怒りでも、落胆でも
俺を責める目でもない


覚悟を決めた…そんな目



「……もういいよね?」


「な…なにが…」


「私…頑張らなくても」


「……美咲」


自分の仕出かしたことにも、美咲がこれから何を言おうとしているかも、何も考えたくないと脳が拒否している

そんな頭の中で
面と向かって『美咲』と呼んだのはいつ振りだろうと、決意を込めた美咲の目を前にしても、そんなことを考えてしまった俺は、エミが言っていたように、逃げてるだけの自分が可愛いダメな男なんだと思う



「あなたに嘘を吐かせるのも、あなたの嘘を気付かないふりするのも…限界なんだ」



なぜ美咲が知っているのか…
そんなことは今はどうでもいいのかもしれない


エミとの関係を言わなきゃいけないと…



なぜ嘘をついたのか
エミに気持ちが移ったことなんてない。俺には美咲しかいないんだ。後伸ばしにしてしまったけど、きちんと話さなきゃいけないと思った


「美咲…俺は」


「その人に本気じゃないのも分かってる」


「だったら…「でも!」」


考え直して…そう言おうとした
話を聞いて…そう言おうとした


「本気じゃなくても、つき離せないのも分かってる」


エミとの関係…美咲がどういう風に知っているのかは分からない


でも…美咲は知っているんだ


「あなたの事は、私が一番知ってるから」


自分が一番の、情けない俺だということを…


そんな俺だと知っていて、ずっと傍にいてくれていたんだと…






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