ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├お姫様の脱走2

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世間は――狭い。



由香ちゃんが相手をしている"酷いハッカー"とは、玲くんのことだろう。


間違いなく。


そのハッカーの足取りの一部が、逐一身に覚えがあるものだから。


だから…聞いてみた。


「ねえ、由香ちゃんが作ったというゲームって、『B・R(ブラッディ・ローズ)』っていう恋愛ゲーム?」

「そうだよ~」


期待を裏切らない、嬉しそうな声。


「何だい、神崎も遊んでいるのかい?

ああそうか、宮原の友達だったね、君は」


何処までも無邪気なもので。


「…あのさ、由香ちゃん」

「んー?」


「あのゲーム、何?」


「何って…遊んでいるんだよね、君」


「いやその、東京イケMENSといちゃいちゃゲームだっていうのは判るんだけれど、それだけじゃないでしょう?」


すっと…由香ちゃんの体が離れ、その目が細められた。


――警戒、だ。


由香ちゃんはやはり、事情を知っている。


だからあたしは、ずばりと切り込んだ。

核心へと。



「血色の薔薇の痣(ブラッデイ・ローズ)って言えば判る? 

あれ――何?」



由香ちゃんの顔から、親しみやすい柔らかさが消えた。


変わって出たのは…

真情を覆い隠すかのような冷ややかな仮面。


「あたしね、弥生と一緒に2回も襲われたんだ。しかも昨日のプレイベントだというので、血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の集団に襲われたんだよ」


暫し、あたし達は見詰め合う。

張り詰めた空気を纏いながら。



「教えて、由香ちゃん」


「………」



やがて――…

由香ちゃんが口を開いた。



「昨日のあれは――

血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の淘汰。

絶対数の調整――兼呪詛」



溜息混じりのその口調には、

それまでの甘ったるさはない。


「血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)に遭遇して、闘いに勝って、それで普通のままなんてね。

――バグ取り、しないとな」


何処までも冷めたものだった。


 
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