ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├警護団長の決意

 桜Side
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櫂様と馬鹿蜜柑が姿を消してから、暫く経つというのに、未だ2人が帰る気配はない。


そう容易く、空の赤い色が薄らぐことはないにしろ、何かトラブルでもあったのだろうか。


やはり私が櫂様に付き添った方が良かったのではないか。


切っても切っても、減らぬ血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)。


私が倒した数は、数千にも及んでいるはずだ。


私は――

幾許かの違和感を感じていた。


それはほぼ、直感だ。


血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)の動きに迷いがある、ような。


迷い?


血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)が櫂様の呪詛の効果に一役買っているのなら、明確な対象は櫂様だけなはずだ。


意思を持たぬ血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)が。

操られているばかりの忌まわしき生ける屍が。


迷いをみせているということは、

確固たる命令が揺らいでいるとしか思えない。


襲いかかってくるこの凄まじいまでの戦闘本能は、"襲う"ことに対しては変わりがないようだ。


だとしたら……?



1つ――疑念が湧く。



例えば……

呪詛の対象が櫂様ではなくなった、とか?


いや何か違う。


櫂様への呪詛は有効で在りつつも、

更に対象が増えてしまった、とか?


そちらの方がしっくりくる。


血色の薔薇の痣(ブラッディ・ローズ)は、

櫂様と煌が消えた方向に流れようとしている。



だとすれば――

新たな対象はこの場に居る私達ではない。



――出来るだけ早く、玲を私の元に寄越せ。



嫌な予感がするんだ。


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