くるきら万華鏡
妙な仲直り
 翌朝、有坂くんは何事もなかったかのように、何食わぬ顔で、いつも通り時間ぎりぎりに学校へ現れた。


 有坂くんが教室へ入るなり、


「どうしたの? その顔?」


 奈緒が血相変えて駆け寄った。


 私は、そろそろ朝のホームルームが始まるので、話していた友達とも別れて席に着いたところで、そこから遠目に、二人のやりとりを眺めていた。


「転んだ。」


 有坂くんは、いつもの無邪気な笑顔で答えた。


「顔から?」


 奈緒がそう言って、訝しげな顔をすると、


「そう、顔から。」


 涼しい顔で言い張り、有坂くんは不意に私を見た。


 突然に向けられた視線に、距離があるにも関わらず、私の心臓が跳ね上がった。


 慌てて視線を外してうつむくも、そのわざとらしさに思わず溜め息が漏れる。


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