一瞬の永遠を、きみと

まだ海の匂いはしない。


だけど真夏の風の香りは、不思議な何かを孕んで、わたしの中に沁み込んでいく。



「夏海」



朗がまた、わたしを呼ぶ。

「なに」と応えると、「見て」と短く返ってきた。


視界の隅で、カーディガンをまとった朗の腕がまっすぐに伸びる。

白い手がどこかを指差して、わたしの視線がそれを追う。



「綺麗だな」



見えたのは、遠くの町の、さらに遠くから昇ってくる、大きな大きな白い太陽。


真っ暗闇だった世界を照らす、眩しいほどに明るい、夏の朝焼け。




こんなにも容易く日は昇る。

簡単に、朝なんて来る。


明日なんて待たなくたって、気が付いたらもう、明日は、今日だ。



「うん……綺麗だね」



ただ、今は単純に、その朝日を綺麗と思えた。


太陽はここまで光を届けて、そのせいか心が焼けるみたいで。


なぜだか少し、泣きそうになった。

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