水島くん、好きな人はいますか。

・共鏡



病院で点滴をしてもらった帰り道、ドラッグストアに寄ってから暇つぶしの雑誌も買おうと本屋にも立ち寄った。


久々に漫画が読みたい。全作読み切りがいいなあ……。


平積みされた漫画雑誌の表紙をぼんやり眺めていると、誰かに呼ばれた気がして顔を上げた。


「み……っ!!」


ガンッ!と後ずさろうとした足が本棚の下部にぶつかり、恥ずかしさでいっぱいになる。


「驚きすぎじゃろ」

「え、え!? だって、どうしてっ……!」


おかしそうに笑う水島くんがいる。
まだ午前中なのにどうしてか本屋に、水島くんがいる。


「病院の帰り?」

「え!? あ、昨日はメールありがとう! えっと、ただの風邪で……あ、うつるからあんまり近づかないほうがっ」

「大丈夫だいじょーぶ。万代マスクしちょるし。それより荷物多くなか?」

「これはポカリとか、いろいろ……ご飯食べてなくて」

「持っちゃるけん」


手を差し出されても理解できずにいれば、


「家まで送る」


と、水島くんはわたしの持つ買い物袋をぐいと引っ張る。


「家……って、いえあのお気遣いな、くっ!?」


言っているあいだに重い買い物袋が奪われてしまった。


「漫画。買ってきてよかよ」

「え!? あ、いや、漫画はもう……」


いい、というかそれどころじゃなくなったんですが……。
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