Little Princess



――それは、本当に突然のことだった。




「……美奈!?」




荒い、息づかい。


慌ただしく駆け寄ってくる音。



彼の声と、足音でさえ記憶していた私の耳は、一瞬で作動が停止した。



…忘れてた。


慎治が探しに来る前にここを出ようって決めていたのに。


シロツメグサの冠をつくるのに、熱中しすぎたんだ。




「…心配したじゃん。」



ぎゅっ、と慎治に力強く抱きしめられる。



全てが狂った私の計画は、見事に崩れおちて。



柑橘類の香水に包まれながら、私はその場に立ちつくしていた。











< 19 / 41 >

この作品をシェア

pagetop