―――…


AM 8:20




「…ふぁ~ぁ」




大きな口を開けてあくびをするのを、手で押さえながら、学校の門をくぐる。




今日も朝からいい天気。

だけど真冬の晴れた空はどこか寂しさを感じさせる。




昨日も、ろくに眠れはしなかった。それでも胸で何かつかえていたものがスーッと取れたみたいに、朝の気分は明らかに今までと違った。




伊吹くんのおかげ…?




「いーや!絶対ちがうわっ!!」




あたしの独り言が大きすぎたらしく、下駄箱で周りにいた生徒たちが一斉にあたしを見た。




「何が違うの?」




靴を持ったまま振り返ると、後ろに繭が立っていた。




「繭…おはよ。昨日はごめんね?」




あたしが謝ると、繭は怒っているかのように頬を膨らませる。




「授業サボるって言うから戻ってくるのかと思ったら、あのまま帰っちゃったんだね」




「うん…」




「メールぐらい返してよね。心配するから」




繭は少し呆れたようにため息をついた。




心配かけてごめんね…。




繭は、いつもそう。
あたしから話さない限り、繭からは何も聞いてこない。




「ごめんね」




それが繭の優しさなんだと思う。




「しぃーっ」




後ろから聞こえたあたしを呼ぶこの声……アイツに間違いない。




あたしは耳を両手でふさぎ、聞こえないフリをする。




「ぎゃっ!」




誰かがいきなり後ろからあたしを抱きしめた。