この涙が枯れるまで
~第十八章・真実~

百合と別れて、5年の月日が流れた。


5年後の春。


もう桜が散り始めた頃。


僕は今日もこの桜の木の下で、百合を想う。


『百合…見えるか?
もう5年も経つんだな、
…俺幸せだったよ。
百合に恋をして、
百合を愛して。
今でも百合は俺の一番だから…』



5年も過ぎると、ここから見る景色は、少しずつ変わっていた。


ビルがたくさん増えて、僕はあまり好きじゃない。


でも百合を想う気持ちは変わっていないよ。



僕は大きな箱と、紙を持って丘を下る。




『ただいま』


『優おかえりなさい。
疲れたでしょう?何賞だったの?』



『特別賞だった』



『優すごいね~、もうプロみたいなもんじゃん?』


と幸が言う。


『あれ?幸帰って来たんだ?』



『ちょっとね~』


『旬君とケンカしたらしいわよ』



『もぉ~お母さん!!』


幸は、三年前に旬君と結婚をした。


そして、子供も産まれた。


『空《そら》~今日もかわいいな』


旬君と幸の子供の空だ。


今年で2歳になる。



この世界は確実に動いていた。





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