あひるの仔に天使の羽根を

・親近

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――場違いだ。


あたしは思った。




櫂は今まで、紫堂関係のパーティにあたしを連れたこともなければ、あたしからせがんだ事もなく。


今回、櫂と初めて共の宴に出席し、皆と同じように櫂の傍に居られるのは、結構嬉しかったりしていた。


いくら物分りいい幼馴染を演じていようと、やはりあたしの知らない櫂の世界が存在しているのは気分がいいものでもないし、庶民には縁遠い世界のパーティというものを体験してみたい……好奇心もあったから。


コスプレ好きな由香ちゃんは、玲くんとあたしの部屋をいったりきたりしながら、本物のメイクスタイリストさながらに、用意されていた化粧やらピンやらを駆使して、慣れた手つきで素晴らしく仕上げてくれた。


鏡の中のあたしは、驚愕にぽかんと口を開けていたが、


――むふふ。皆の驚く姿が見たいね。


そう三日月形の目で、鏡越しからあたしに言った。


皆、どう思うかな。


2ヶ月前。


生まれて初めてお洒落したあたしは、不可抗力的に婚約寸前まで行ったが、結局着飾った生のあたしを見たのは陽斗だけで、他の皆が見たのは化粧を落とし、動きやすいように裾を裂いたぼろぼろドレスを身に纏うあたしの姿。


幾らあたしが化粧をして着飾っても、大した衝撃にはならないかもしれないけれど、今は由香ちゃんが、本人さえ吃驚する程綺麗に仕上げてくれたから。


――神崎、自信持ってい~よッッッ!!!


だから調子に乗ってしまったんだ。



――うわあ、芹霞。凄く似合う。綺麗すぎる。


目を細めて優しくぎゅうをしてくれた玲くんの反応もよかったから。


それでも。


元から顔のいい人は、どんな格好をしても綺麗すぎて。



玲くんはやると言ったらとことんやる人で、

化粧をする必要もないくらい肌理細やかな白い肌をしているのに、

それでも満足せずに美を追求をする。


出来上がった玲くんの姿に、正直負けたと敗北感に顔が引きつった。




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