手の中の蝶々


しかし時既に遅し。

はっ、とした託さんの顔は、次第に青ざめて。

『ちっ違っ!海!別に俺は只…!』

『説明しろよ阿呆が』

先生は私に背を向けてるから、表情こそ分からないものの、託さんがあれだけ縮こまってると言うことは、さぞ恐ろしいのだろう。


『…最初に見たのはさ、海の家から出てきたちーちゃんでさ、そんなのそんなの気になるじゃん!』
『ちーちゃん…』

『うあっ…えと…、ごめんなさい。気になりすぎてこそこそちーちゃんに会ってました』

しゅん、と頭を下げる託さん。

『でもさでもさ!海こそなんで紹介してくれないんだよ!俺下に住んでんだから直ぐ会えるじゃん!』


え?下に住んでる…?
でも託さんいつも私送った後、車で何処かに消えていってた気が。

『ちーちゃんにも嘘ついてさ、苦しかったんだからな!』

な、何故に逆ぎれ気味…?


『女子高生だし、お前先生だし、禁断過ぎるだろ!いけないんだぞ!』

いけないんだぞって…。
玄関で叫び散らす金髪…。
怖いです、託さん。

『禁断話聞かせてくれよ!ひでぇよボス!この俺に隠し事なんて!』

『おまっ…!馬鹿!!』

「ボス……」


先生は託さんの頭をバシッとしばく。

そして聞き流せないのは、託さんの口から漏れた、ボス、という単語。
それに加えて先生の焦りっぷり。

気になる。





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