明日も、キミに恋をする。
くじを引く順番を待ちながら隣の犬山くんと目が合う。



「内田さん、あけおめー」




犬山くんは気だるそうにあくびをしながら言う。





「犬山くん、あけましておめでとう」


「席替え、寂しくなるなぁ」


「でも…同じクラスなんだし」


「はは、そこはウソでも同調してや?冷たいなー」







犬山くんは笑う。

私は陽子ちゃんの言葉を思い出す。







「ねぇ……犬山くんって好きな人とかいるの?」


「最後にやっと内田さんが俺に質問してきたと思ったらなにその質問(笑)」


「か、彼女とかいる??」





くじ引きの順番が迫る中、私は聞きたいことをできるだけたくさん聞く。


犬山くんは笑う。






「ははは、好きな人も彼女もおらんで」


「じゃあ……どんな子が好き??」


「俺、誰かを特別好きとか経験ないからなぁ……どの子もみんな好き」






愛ちゃんが言ってた。

犬山くんの女の子を惑わすのってこういう部分なのかな…





「内田さんと大輔みてたら、誰かひとりに必死な感じもええなぁって思ったけどな」


「え?」


「せやけどそういうのって頑張ってどうこうできるもんやないんやな。そういう相手に巡り会えたとき、俺も分かるんかなぁ」





くじの順番がまわってきて、犬山くんは席を立つ。





「内田さんともっとこういう話したかったな」

「あ……」

「内田さんまた話してな?俺に色々教えて(笑)」




笑う犬山くん。






私も……

大輔くんと逢うまでは知らなかった。

こんなに大好きな気持ち。




転校してこなければ…

同じクラスにならなければ…

陽子ちゃんと席が前後にならなければ…

大輔くんがいなければ…




きっと一生、知らなかったよ。



奇跡なのかもって思った。







犬山くんのそういう初めての相手が、陽子ちゃんになれば良いな…

くじをひく犬山くんの背中を見つめながら、そう願った。



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