お兄ちゃんが、見てる。[短51P]
「お兄ちゃん……」


「彼氏の携帯、繋がらないんだろう? もうかけても仕方ないよ」


 そういいながら、あたしの携帯を取り上げるとパタリと折りたたんだ。


「でも……」


 あたしが携帯に手を伸ばすと、お兄ちゃんがその手を掴む。

「亜季、こう言ってはなんだけど、きっとあの彼氏は他の女のところに行ったんだよ……。あんなにチャラチャラした男だもの」

 確かにトオルくんは、ちゃらい、と言われるような人だった。

 長い金髪に、ピアス。

 付き合ったその日に手を出しくるような人だ。



 でも優しかった。
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