未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*
Chapter1

*王子到来




窓の外、散ってはチラチラと舞う桜。


「阿部」 「はい」 「安藤」 「はい」



教壇の上では、担任のキジモンこと雉本が出席を取っている。


「井上」 「はい」 「大久保」 「ハーイ」



キジモンと男子生徒の声が交互に耳に入ってきて、なんだかそれがとってもリズミカルで眠気を誘われる。


「小野」 「ハイッ」 「神埼」 「はい」



ここは2年6組。
あたしは昨日で高2になった。



「木村」 「はい」 「近藤」 「ヘイッ!」


お調子者の男子の返事の後に起こる笑い声。


「斉藤」 「ハイッ」 「佐藤」 「は~い」



「ハッ(アァ~ア)──」


思わず出た欠伸を隠すため両手で口を押さえたら、涙が滲んだ。

それにしても春はやっぱり眠たいやぁ……。



「高橋」 「はい」 「辻之内」 ──


……………。


「辻之内ー?」



リズミカルだった旋律が


── 突如、崩れた。

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