終業チャイム
終業チャイム



聞きたいこと、聞きたいこと…


自分からとっさに出てきた発言のせいで、あたしは宿題を進めるよりも頭を抱えた。




「おもしれー話なんかねぇぞ。」



谷田の言葉に急かされる。


正直、教え子だった奥さんとの馴れ初めから聞きたいものだが、その時あたしはどうなってしまうのかが怖かった。



しかしこんなチャンスは滅多にない。


でも、痛いのは嫌いだ。




「奥さんとの馴れ初めとか…」





好奇心に負けた。


震えた喉から出た声はもっと震えていて驚いた。




「…そんなの聞いてどうすんだ。」


「ほら、生徒と教師の恋って軽い憧れ…じゃ、ないですか…」




由希子の言葉を思い出して言ってみた。

あたし自身、そんな憧れなどこれっぽっちも持っちゃいないが。


口に出してみると、生徒であるあたしが谷田という教師に言ったせいか、告白っぽく聞こえる気がして相当恥ずかしくなってきた。





< 22 / 36 >

この作品をシェア

pagetop