モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語
「海ちゃん、遥と喧嘩したの?」
海が椅子に座り、夕食を食べていると突然母親が聞いてきた。
ドキン、と心臓が高鳴る。
「・・・わかんない。」
自分が何をしてしまったのか、分からないのだ。
謝るに謝れない状況に海は表情を曇らせる。
「でも、お母さん安心したわ~。」
「え?」
「あんたたち双子が喧嘩なんて、今までしたことなかったもの。」
「そうだっけ?」
「そうよ。」
母親は嬉しそうな表情を見せた。
海は不思議そうな表情をして母親を見る。
「海は、遥が好き?」
「も、もちろんだよ!遥のおかげで私・・・変われたんだから。
なのに、遥・・・冬樹君のおかげだとか言い出して、
怒ったみたいで・・・。」
「ふうん?」
母親はにこにこと笑顔を絶やさない。
「遥、海のことが好きなのね!」
「へ?」
「愛されてるわね~海ちゃん。」
「な、何言ってるのお母さん!
そうだったらうれしいけど、でも、それはないよ!
私ウジウジしてるし、はっきりしないし、地味だし・・・。」
海は母親の 好き を家族として好きだと勘違いしていた。
そんな彼女を見て母親は笑う。
「でも、遥にはちょっと困ったものね。」
「・・・え?」
母親はいつのまにか夕食を食べ終えていて、
ごちそうさま、と言って食器を片づけはじめた。