君を忘れない。
「遺書と思わない方がいい。」
少なくとも俺は、喜代に遺書を書いたつもりはない。
「遺書ではなくて、なんだと言うんだ?」
「…恋文だ。」
「恋文?」
「最期の想いを告げる、恋文。」
先立ってすまない。
最後まで、側で守ってやれなくてすまない。
一人置いて逝ってすまない。
「驚きだな。お前に慕っていた女がいたとは。」
「自身が、一番驚いている。」
ずっと学業に夢中だった。
それ以外に、興味などなかった。
女にも、戦争にも、この国にも、未来にも。
ただあの日、桜吹雪の中で、俺の中で全てが覆されたんだ。
君と出逢って、生きる意味を見つけた。
同時に、命に変えても守りたいものが出来た。
それが、俺の使命だと思った。
君の為、君が笑うなら、君が平和を望むなら、御国の為に死んでやるさ。