もらう愛=捧げる愛
職員専用の女子トイレの1コ1コに誰もいないのを確認して、友莉はわざとらしく大きな溜め息をついた。


「もう、初音ったら。いい加減やめたら?男の渡り歩き」


“渡り歩き”というか。


あたしからすれば“素通り”。


あたし、仁科 初音(にしな はつね)───は、その日の気分で抱いてくれる男の人を選ぶ。


援助してもらってるワケでもなく、セフレでもなく。


間違わない結婚をするための、体を使った“お勉強”。


「大丈夫、大丈夫。1人切ったから」


「1人、って…。切ったって、誰?」


「カルテ管理の堤さん」


「それまたどうして?」


「奥さんが身ごもったんだってー。“妻も子供も捨てるからオレと一緒になってくれ”なんて言うから。養育費を払っていかなきゃならない男となんて、面倒であり得ない」
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