花材選びをする素振りをしながら防水加工の腕時計をちらりと覗き見る。この人で最後だなと小さく呟いて、真希はトルコキキョウの茎を指の間から引き抜いた。



真希の指先から、一気にちぎり取られた柔らかな葉が白いタイルの床にひらひらと零れ落ち、連続して違う種類の葉が次々と床に積み重なっていく。



正確なスパイラルに組み上げられた様々な長さの茎は、切れ味の良い刃で同じ長さに切り揃えられ、積み重なった葉の上に、切り落とされた茎が一度に落ちる。茎の色と同じ緑の紐で束ねられた花束は、保水処理のあと柔らかな素材の深い紫と硬い黒のペーパーで包まれた。



真っ赤な薔薇と鮮やかなグリーンのトルコキキキョウの二種類だけを使った小ぶりなブーケは、黒と紫のラッピングに映える。金のリボンの装飾を施したこの時期限定の紙袋にも、しっくりと品良く収まった。


スーツ姿の男性客は、それを見てうんと頷いた。真希も口元に少し笑みを浮かべてそれに答える。クリスマスの夜、この日最後の仕事が無事に終わろうとしていた。




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