「あ、あの……、なんでここが分かったの?」


音がこれっぽっちもしない、静かなエレベーターの中。
私の肩を抱いたままの宮坂に聞く。


「早川の様子がいつもと違うって気付いて不思議に思ってたら、沖田が終業時間そこそこに帰ったって聞いて」


宮坂は、正面のドアを見たまま私の質問に答える。


「一課にいる知り合いに聞いたら、沖田が昼ごろにここのホテルに電話して部屋を予約してたって教えてくれたから。
今、沖田がどうしてもモノにしたい女は、多分、早川くらいだし」
「あの、さっきの“瑞穂ちゃん”は?」
「会社出た時、たまたま部長とあの子が話してるのを見かけただけ」
「あ、接待で?」
「そう。他にも何人かキャバ嬢がいて部長と店に向かったみたいだったけど、あの子が沖田が連絡くれないとか色々言ってたのが聞こえたから、使えると思って連れてきたんだ」
「そう、なんだ……」


しん、としたエレベーター内に、ポンって明るい音が鳴る。
フロアに下りると、明るすぎない照明に照らされたドアが、奥の方まで続いていた。






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