美しいあの人

理解と心配

「エリさん、ご指名です」
呼ばれて行った席には松井さんがいた。
そういえば半月くらい顔を見てなかった。
「ひさしぶりー! メールしてくれればよかったのに」
「ごめんごめん。突然ヒマになってさ。座んなよ」
松井さんが好きなの飲んでいいと言ってくれたので、座るなりボーイにカクテルを頼んだ。
松井さん用にもビールを頼む。
しげしげと顔を覗き込まれた。
「なに?」
うっかり素に戻る。松井さんは笑顔だった。
「元気そうで良かった」
「心配かけてごめんなさい」
素直に謝る。
「でもさ。時々一緒にアフター行ったりしてたから、
もうそんな心配されてないと思ってたんだけど」
運ばれてきたビールとカクテルで乾杯する。
松井さんが困ったような顔をした。
「ずっと気にはなってたんだ。
俺が余計なこと言ったせいで困ってたらどうしたもんかなと思ってた」
ああ、祐治のことを決着つけろってやつね。
そういえば松井さんにはどうなったか知らせてないんだった。
聞かれなかったし。
中身が半分くらいになったビールグラスの水滴をハンカチで拭いながらちょっと考える。
祐治が家にいることを松井さんに話していいものだろうか。 
でも、彼氏が出来たことをわざわざお客さんに言うなんて普通はしないし。
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