お義兄様は官能小説家?!(仮)


とある日の朝。
あたしはお母さんに頼まれて、鼻歌混じりに皆の部屋を回っていた。

「ゴミ、ゴミ…っと」

朝食を作っているお母さんの代わりに皆の部屋のゴミを集めるのが、あたしの仕事だ。
あたしの部屋から、お母さんの部屋、お義父さんの部屋、リビング…と、ゴミ箱からゴミを集めてゆく。

「…と、後はお義兄ちゃんの部屋、か…」

お義兄ちゃんの部屋には勝手に入っちゃダメって、キツく言われている。
原稿とかメモとかがそこら辺に散乱してるから、恥ずかしいって言ってた。
そんなのあたし、全然気にしないのに。
お義兄ちゃんは、小説家をしているらしい。
らしい、というのは、あたしが今まで一度もその作品を見せてもらったことがないからだ。

「一度読んでみたいんだよね…お義兄ちゃんの小説」

優しいお義兄ちゃんが紡ぎ出す物語なんだから、心がほっこりと温かくなるような、そんな話なんだろうなぁ…

「亜梨香ー?ゴミ、集めてくれたー?」
「あ、うん!今行くー!」

いっけない。
あたし、ゴミ集めしてたんだった。
お義兄ちゃんの部屋のゴミはいつも外に出しておいてくれているから普段特に困らないんだけど、今日は忘れてしまっているのか、出ている様子はない。

(…ちょっとだけなら…いいよね?)

どんな部屋なのか、興味もあるし。
お義兄ちゃんには悪いけど、少しお邪魔しちゃおう。

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