夏が終わり、秋になった。


あたしと隆也は、相変わらず、月に一度か二度、ホテルで会うだけの付き合いだけれど、それでも少しだけ、関係に変化が訪れていた。


セックスの最中、隆也があたしに「好きだ」と囁くようになったのだ。


初めてそう言われた時は、幻聴ではないかと耳を疑ったけれど、確かに彼はあたしを「好き」だと言った。「特別な存在」とも。


あたしは、遠慮がちに「ありがとう」と答えた。

「好き」だと返せば、隆也が離れていく。


そんな気がしたのだ。


せっかく実った小さな果実を、色づく前に、自らの手でもぎ取るようなことだけはしたくなかった。

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片思い  失恋  切ない  元カレ  大人  純文学 

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