あやとり

思考



甲斐君の言葉は日が経つにつれて、より私に考えさせた。

文化祭のあの日、甲斐君もそして、村井君もいつもよりずっと大人に見えたのは事実だ。

みんなの前で大げさに恋や夢を語るクラスメイト。

一対一で話しているときにポツリと語る想いの一片。

今までは気にも留めていなかったけれど、みんなそれぞれを自分で考え、決断し、何かを見ようとしているのかもしれない。

自分はみんなより大人びているつもりでいたけれど、本当のところはどうなのだろう。

短大を出た後は普通にOLをして、結婚して……それが夢って訊かれたら、そこで頷くのだろうか。

大人のように覚めた振りをして、現実を理解しているような顔をして、ただ何も考えようとしていないだけなのかもしれない。


< 98 / 212 >

この作品をシェア

pagetop