――……


走って走って走って――


見慣れた通い慣れた研究室に駆け込むと、騒々しさに顔を曇らせた、幼なじみの結城健太郎(ゆうきけんたろう)が振り返った。


眉間に寄せた深い皺。こめかみに立った青筋。
長い付き合いのせいで、その後に浴びる言葉は、わざわざ言わせなくてもわかってる。


「ごめん。ちょっと朝バタバタしてて」


先手を打つと、健太郎は溜め息をついた。
別に説明しなくても健太郎にはわかっているはず。
いつもの様に迎えに来てくれた健太郎に、私は間に合わないから先に行ってと、運転手と車諸共、先に大学に向かわせたんだから。


「……それは知ってる。
それよりも今日は遅れるなってあれだけ言ったのに、遅刻してる方が問題。
その上うるさいし、挨拶もなし。
いくらなんでも失礼じゃないか、って言いたい」


案の定。結局小言が始まった。


昔から几帳面で真面目な健太郎は、なんだか妹離れしてない兄のよう。
いや、もうほとんどお母さんかもしれない。
多分生まれた家と育った環境も大いに関係してると思うけれど。
私の両親がいつも忙しくて、私が一人で過ごす事が多いのを気にしてくれてるのはわかるけど、それは仕事のせいだから仕方ない。


それにもようやく区切りがついて、もう解放される今となっては、何も気にしなくていいと思うけれど。

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大人  幼なじみ  多世界    未来  時空  記憶  真実  先生 

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