殴った側も心が痛いんだ……とか、青春ドラマで言うよね?
実際、殴ったら心よりまず、手が痛かった。
ぐーで殴ったから第一関節が痛いかも。
殴った私が逆にダメージを受けてるし。

「……っ」

ぺたりとまた床に座り込んで痛い右手を左手でさすっていたら、涙がどんどこ溢れてきた。
痛い・寒い・怖い・恥ずかしい……もう、ごちゃごちゃだ。
鼻水をずずっとすする音が、静まりかえった室内に響く。
最悪!
きらびやかに着飾った外人達の姿が、涙で歪んだ眼に映る。
まるで映画で見る様な……舞踏会かなんかなの?

『これは……どういう事だ! ミー・メイ!!』

私に殴られた青年が大声で怒鳴った。
言葉はわからないけれど、怒ってるのは口調と表情で分かった。
その青い瞳は殴った私を見ていなかった。
私の……左?
あ、気がつかなかったけど……女の子が立ってる。

『ミー・メイ! お前は……異界から人間を連れてくるなどしてはいけないことだ! すぐにこの娘を返還しろ』

青年が女の子に、言葉を叩きつける。
すごい剣幕だから私は左にいる女の子が気の毒に思えて……他人が怒られてるからか涙も止まり、頭が冷静になってきたかも。
ちらりと女の子の様子をうかがう。
かわいそう。
可愛らしい顔が真っ青!
妹がいるせいか年下の女の子に弱い私は、彼女が気の毒になった。
何か言いたげな唇は震えて声が出てこない。
まだ高校生位の歳に見える……妹より下かな。

「ちょっと、青年! やめなさいよ、可哀想でしょう!?」

思わず意見してしまった。
青年はぎょっとした顔でこちらに顔を向けて……あたふたと自分の肩からマントを外して、私にかけてくれた。
片方の膝をつき、そっとかけてくれたマントからはふわりと柑橘系の香りがした。
初めてちゃんと確認した青年の顔は……。

「……イケメン君、殴ってごめんなさい」

さっき殴った顔は俳優みたいに整っていた。
私が殴った程度では、赤くすらなってなくて安心した。
イケメンだけど顔は硬くて丈夫なんですね!



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