苦く甘い恋をする。
私は愛海を視線を合わせないように背中を向け、ドアに向かって歩き出した。


本当の、本当の、本当は……。


言っても、どうしようもないことだって、思ったから。


愛海に言ったところで、長谷川くんが遥ちゃんを好きなことに違いはないし、何の解決にもならない。


だとすれば、最初からなかったことにした方が楽だから。


だから、私は……。


「ごめん、帰る。待ち合わせあるから」


背中越しに片手をあげた。


偽りのぬくもりなんか、いつでも簡単に手に入る。


それに引き換え……友情とか恋ってものは……本当に面倒くさい。
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