テノヒラノネツ

(ま、いいか。デートはデートだもんね)

先に銀行の用事を済ませて、都心のデパートへ向う。
地下鉄から、食品売り場……お歳暮ギフトコーナーで、ギフト配送の手続きをすませると、古賀に振りかえる。

「で、古賀君。どうする?」
「?」
「彼女のプレゼントよ」
「ああ、じゃあ、とりあえず……こっち」

千華の手を引いて、ワインコーナーに足を運ぶ。

(……また……こうやって手をひかれると、なんか切なくなるなあ)

店員にあれこれと尋ねる古賀の様子を、ぼんやりと見ていた、
彼女は同い年なのかもしれないと、千華はこの時思った。
彼女の生まれた年のワインを彼は選んでいたから……。

「千華、お前、赤と白どっちが好きなんだ?」
「どっちも好き」
「俺よりザルなんじゃないか? じゃあ、それの白も下さい」

店員は一例をして、綺麗にラッピングする。
それを紙袋に収めて、古賀に渡す。

「お買い上げありがとうございました」

その言葉を背に、古賀は紙袋を千華に渡す。

「え? 何? 彼女に、じゃなくて私に?」

「ああ」
「やーだー、お礼なんていいのに、義理堅いんだから」
でもありがとね、とワインを受け取る。
「……これじゃ、気がつかないか……」
「何か云った?」
「いいや」
「?」
人ごみの中、エスカレータに乗り、彼に手を引かれて、ブランドショップがひしめくフロアに足を運ぶ。
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