当日―――――……。
玄関まで迎えに着てくれた友人は千華を見て呆れた表情をして見せた。
開口一番。

「な・ん・で・支度してないのよ?」

彼女の迫力にたじろいで後ずさる。
千華は千華なりにいろいろ考えていたのだ。
着ていく服はどうしよう、やっぱ美容院に行っとけば良かったか? いやまて、年に一回あるかないかの同窓会もどきにここでそんなに気合入れてどうする、親友の結婚式とかなならそれぐらいはやってもいいけどさ。
それに、古賀だけじゃなく、他のメンバーもいるんだから、そこまでバレバレの身支度をして出かけてたら―――彼等の内心で何を推察されるかわかったもんじゃない。
かといって、あまりにラフなのも年頃の女性としてどうよ? 洒落も色気もないのは自分が男だったら激しく萎える。
……etc……etc……。
千華の言葉をそこまで聞いて、友人はすうっと息を吸い込み、勢い良く捲し立てる。

「ばーかーじゃーなーいーのー??? アンタ!!! 他の男のこと、しかも付き合う気もない旧友の推察にびびることないのよ! 冷やかされよーとナンだろーと構うこっちゃないのよ! 好きな男に会うなら、ちゃんと可愛く見せようって思うのが恋する女の基本姿勢でしょうが!! ワードローブ開けなさいよ!」

友人の迫力にたじたじとしながら、ワードローブに手をかけた。

「別に恋するってわけじゃな――――」
「片想いなんでしょ?」

――――果たして、この想いは片想いなんだろうか。

共有した思い出。

荒川の土手沿いをどこまで遠く歩いていけるか。
荒川の終わりは海がある。海を見に行こうよ。
そう云って、ずっと歩きだして、小学生の子供の帰宅を促す区役所のチャイムがなっても、海にはたどりつけなくて。
そこからまた家まで歩いて帰るのに何時間もかかって心細くなって二人で泣きながら手をつないで歩いたこと……。
暖かかったてのひら……。