テノヒラノネツ
今日の集まりで、みんなの中心にいる彼は、今日に限らず、学生時代からずっと彼等の中で中心にいた。

小さい頃は、ずっと一緒で、就学前はよく遊んだものだが、就学後――――小学校、中学、高校、大学、そして現在―――と時間を重ねるたびに、彼は千華から遠い存在になっていた。
遠いな、寂しいなと最初に思ったのは、小学生の時だ。

お互い普段と変わらない態度で、教室で話し合っていた時――――、同じクラスメートの男子達が「古賀と進藤はラブラブだ」と冷やかしたのだ。

今ならそんなことはどうってことないのだけれど、当時の子供心としては照れくさく、恥ずかしく――――そしてしつこいぐらいの冷やかしがうっとうしくて、彼と距離を置くことを決めた。
自分も冷やかされて恥ずかしいし、照れくさいし、気まずいけれど、祐樹君も冷やかされて迷惑だろうな……。
単純にそう思った。

そうして、登校時間をずらし、学校ではなるべく女子と話をして、帰宅後に遊ぶ相手も女の子を誘うようにした。
一番初めの遠いな、寂しいなと感じるようになった時期だった。
その甲斐あって、冷やかしはそんなに長くは続くこともなく千華は安心したものだ。
だが、この頃、千華は古賀との出来の差を自分の母親に比較されはじめる――――。

――――お隣の祐樹君はほんとうによくできて……。

この科白を訊かないように、距離を置くにも拍車がかかった。
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