華麗なる偽装結婚


「ねえねえ、阿美子ちゃ~ん。
ちょっと待ってよ。

その、君の、今手にしてる殺人モンスターブックには、真理ちゃんとのデートの時間は書いてあんのぉ?

参ったなぁ、今日なら会えるよって言っちゃったんだよね」

彼は椅子からガタリと立ち上がり、私の話をまるで聞く気は無いとでも言うようにクルリと私に背を向けると、窓の外を見下ろした。

「社長…。
大変、残念ではございますが、真理ちゃんとの時間はございません。

それと、これは『殺人モンスターブック』では無く、社長のご予定を書き込んであるスケジュール帳でございます。

妙な呼び方をなさらない様……」

その時私の口に彼の人差し指がフッと触れた。

「!?」


「…ああ~、分かった、分かったよ。
ごめんね?

だけど、真理ちゃん、怒るだろうなぁ。
気になって商談どころじゃないよー…」

社長はそこまで言うとその細い指先をそっと離して私をその綺麗な流し目でチラッと見た。








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