隆は大きな欠伸をした。


今日はバイトも休みだし、薫がパートの為、外に出向くこともない。


何の予定もない日は久し振りだ。


ほっとしながらも寂しさを感じた。


事件の真相に近付くことが出来ないからか、それとも、薫に会うことが出来ないからか。


薫はこの真上の部屋に住んでいる。


そして同じように家族を殺された過去を持っている。


こんな近くに住み、胸の内を共有出来るにも関わらずその距離は遠く感じる。


それは、この心に潜む殺意のせいだろう。


いつか、この手を真っ赤に染めるであろう日が来るから。


否、いつかこの手を真っ赤に染めたいと願っているから。


馬鹿だな。


隆は布団の中で苦笑した。


何で、誰かを、薫を想ってしまっているのだ。


阿呆らしい。


誰かを想うなど、馬鹿馬鹿しくて、自分に掛ける言葉もない。


誰とも親しくならないと決めていたのに。



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