キスはおとなの呼吸のように【完】
1.先輩の宝探し
「袴田(ハカマダ)。すまない。ちょっと手を貸してくれ」

脚立のうえに立っている大上(オオガミ)先輩が、上空から地面のわたしに声をかける。

わたしはついついいつものくせで、おおきく声を張ってしまう。

「はいっ。わかりました」

きんと冷えた十二月。
ハタチの年も終わる年末。
うす暗い倉庫のなかにわたしの声が響きわたって、ほんのちょっと恥ずかしくなった。
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