キッと車が停まる。気がついたらコーポの前に着いていた。


「どうもありがとう……」


夏海は小さな声で聡に礼を言う。
焦るような手つきで子供のシートベルトを外したとき、チャイルドシート側のドアが開いた。


「私が抱えよう」

「いえ、そんな……」

「鍵を開けるのに不自由だろう」


既に聡は子供を抱きかかえる体勢だ。

実を言うと、夏海は家の前で聡を追い払おうと考えていた。

聡に自分の不実さを詫びる意思がないことは明らかだ。
悠の存在を認めたとしても、金の話になるのは目に見えている。

だからこそ、これ以上厄介な事態になることだけは避けねばならない。

職場でもあんな状態になるくらいだ。職場以外では絶対にふたりきりになってはいけない。


夏海はそう決意していた。


しかし、聡はどうやら悠を抱えたまま部屋の中まで入るつもりらしい。
眠ってる我が子を力任せに奪うわけにもいかず……夏海は鍵を開け、渋々聡を迎え入れた。


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