本当に、すぐに戻るつもりだったのだ。だが、事務所のドアを開けた瞬間、そうは行かないことを知った。


「こんなところで何をしているんです?」


そこに立っていたのは聡の両親、実光とあかねである。


「何を、じゃない! 結婚とはどういうことだ! 私たちは息子の結婚を他人から聞いたんだぞ!」

「そうですよ、聡さん。バツが悪いのは判りますよ。でも、ずっと黙っておけることではないでしょう?」


(――どこでバレたんだろう? 1ヶ月やそこらはごまかせると思ってたのに)


聡は年甲斐もなく、不謹慎な考えをめぐらせた。


「判りました。その件は来週にも家に戻って話します。ですから」

「相手は、あの織田くんか?」


父の言葉に、聡は視線を如月に向ける。
だが、彼は軽く両手を上げ、首を振った。

それに気付いたのか、父は「戸籍を確認した」と付け足す。
どうやらすでに息子の存在も知られているらしい。


「夏海さんの産んだ子供さんを、どうして聡さんが認知したの? 母さんに判るように説明してちょうだい」


そんな母の言葉に、聡は開き直るよりほかなかった。


「理由はひとつです。僕の息子だからですよ」

「そんな馬鹿な話があるか! ちょうどお前が結婚したころに産まれとるじゃないか。それでどうしてお前の実子なんだ!」

「そうですよ! あなたの子供なら、どうして夏海さんと結婚しなかったの?」


ほぼ同時に両親は声を上げた。

その通りだろう。

今となっては、自分でもよく判らない。
あれほどまでに怒って彼女を跳ね除け、辞職後の行方すら探そうとしなかった。
挙げ句に他の女と結婚して……いや、もう止そう。


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