「降りろ」

「……え?」

「着いたから降りろと言っている」


鼻先五センチもない距離で言われ、舞は慌ててシートベルトを外して車外に転がり出た。

男性と身近に接したことなど全くない舞に、ミシュアル王子は激しすぎる。
予測不可能な言動の連発に今にも倒れそうだ。


「舞、隣は何だ?」

「はい? 公園ですけど」

「随分緑が豊富なのだな。入場ゲートは? 料金は何処で払うのだ?」

「掛かりませんよ。だって、区立の公園ですから」

「そうか。では、入ろう」


プリンスが公園で何をする気なんだろう?

不思議に思いつつ、舞はその後姿を見送った。


ところが――。


「舞! 何をしている。さっさと来ないかっ!」

「わ、わたしもですか?」 


なんと、公務員宿舎近くの路上にジャガーを放置したまま、王子は公園に向かってズンズン進んでいく。

車のキーは付けっ放しだ。
これでは盗んでくださいと言わんばかりである。

来いと言われても、心配で離れられない。

舞がそんなことを考えていると、黒塗りのベンツから人が降り、ジャガーに走り寄った。

舞に向かって何か呟くが、アラビア語のため良く判らない。
舞が両手を前で振ると、SPの男性はジャガーに乗り込み、すぐに走り去った。

その時、舞は初めてジャガーの用途を知った。

ミシュアル王子は舞を送るためだけに、車を用意してくれたのだ。


(どうして、こんなことをするの? 何でわたしなの?)


この降って湧いた結婚話を、王子は正直な所どう思っているのだろう?

舞はそれを確かめたくて、彼の後を追ったのだった。


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王子  シーク  許婚  運命  独占欲  婚約者 

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