失恋ショコラ【短】
夕食の支度が出来た頃、篠原がタイミング良くリビングに顔を出した。


「あ〜、腹減った〜……」


「原稿、出来ましたか?」


「そんなすぐに出来るか」


「……締切は1週間前でしたけど」


「本当、お前はうるせぇな」


篠原は面倒臭そうに言って、食事に箸を付けた。


キッチンを片付けながら、黙々と食べる姿を見つめる。


その横顔すら端正で、篠原の書く“主人公を愛する男”は皆、彼自身なのでは無いかと思う。


「……何だよ?」


「いえ」


あたしの視線に気付いて眉を寄せた篠原から、慌てて目を逸らした。


< 16 / 77 >

この作品をシェア

pagetop