主婦だって恋をする

…それよりって何よ!

そう思いながらも続きを聞くために彼を見る。


そういえばちゃんと顔見るの初めてかも。

後で文句言うためによーく目に焼き付けておかなくちゃ。



「連絡先教えてよ」



そう言ってにこにこ微笑む彼に私の目は釘づけになった


面食いじゃない私でも分かる。この子……すごく綺麗な顔。

整った目鼻立ちにおしゃべりそうな薄い唇。

少し立たせた髪は今時珍しく染めてないみたいで清潔感があって――……



「……ねぇ、聞いてる?」



その声に、我に返る。



「あぁ、連絡先ね……って、何で私があなたに連絡先を教えなきゃならないのよ!」


「えー、だめ?」



だめもなにも…何これ、新手のナンパ……?


戸惑っていると、私の後ろに
新しいお客さんが並んだ。


よかった……これで逃げられる。



「じゃ、私はこれで……」



そそくさと店から出ていった私。

閉じた自動ドア越しに、またのお越しをお待ちしてまーすという軽い調子の声が聞こえた。


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