花咲く原石

05.優しい果実

翌朝、とはいえまだ夜が明ける前の時間にシイラは目が覚めた。

微かな物音と人の気配に気付いたからかもしれない。

辺りはまだ暗く、眠る前と変わらない景色が見えた。

一瞬、うたた寝程度しか出来ていなかったのかと勘違いしそうになったが身体がそれを否定している。

まだ少し余韻はあるが疲労はかなり回復したようだった。

でもまだ眠れそうだ。

何となく気配の感じる方をぼんやりと見つめていると、下から登ってきたオーハルが現れた。

「起きてましたか、おはようございます。体調はどうですか？」

人の気配はオーハルのものだった。

いきなりシイラと目が合ったことに驚いたようだったが、目を少し大きく開いただけで相変わらず落ち着いている。

「おはよう…悪くないと思う。」

朝一番の力のない声はあまり説得力がない。

まだ少し寝惚けているシイラにオーハルは優しく笑いかけた。

「朝ごはんの支度が出来ています。下へどうぞ。」

そう言ってオーハルは先に降りていく。



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