もっと大切にする~再会のキスは突然に~
4章

春風が若葉のにおいをフワリと運ぶ5月。

世の中はゴールデンウィークで賑わいの真っ只中だけど、私達の仕事はそれが全く関係なくって、むしろ思いがけない事例が飛び込んできたりもする。

海が近くて自然も豊かなここら辺は、夏になると海水浴客で賑わうし、5月の上旬でもカヌーやラフティング客が溢れ出す。そうなると増えるのが水難事故や慣れない土地での体調不良。



平日より穏やかに過ぎていく業務も終わりかけの夕方、その電話は繭子ちゃんが受けた。


「はい、3歳の女の子ですね。溺水、はい、準備出来次第迎えに行きます。え?お父さんもですか?はい、じゃあ女の子優先でいきます。」


会話中も繭子ちゃんの顔でただ事じゃないのはわかる。

溺水、と聞いてもう体が動き出す。

準備出来次第とのことなので、もう一人のスタッフと病室やベット準備を行う。


電話を切った繭子ちゃんも準備に加わる。
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